雅文化表現者 二條 隆時の世界

Rebuilding the Miyabi

PROFILE にじょう たかとき

1964年東京生まれ。
3歳から二條御家流15代家元二條為晴(祖父)に師事。
國學院大學大學院修士課程修了。
1997年香道の家元襲名。
同門会理事長就任。桜月宮宮司就任。
2008年香道流「桜月流」を創流・初代襲名。
内閣府承認NPO法人「香道と日本の雅文化会」理事長就任。
以来、国内外で香道の紹介や各地での講座を通して、香道の周知や普及に励む。
文部科学省や文化庁、外務省との連携で伝統文化子供教室、海外公館での文化紹介。
NPO法人「香道と日本の雅文化会」理事長。
香道桜月流元家元・桜月宮宮司・歌人・茶人・仮名書家・香道家。

CULTURE

  • 01 和歌

    平安から相伝してきた、
    心の歌い方。

    桜葉の母の情けや 虫たちは 安堵のおもいで かくれやどらむ
    (※宗匠が13歳のとき、はじめて昭和天皇に献詠した歌)

    宗匠のルーツである二條家は、代々和歌を家業にして歌を相伝し、
    平安時代には歌壇を立ち上げるなど、和歌の世界をけん引してきた。
    二條家の和歌論は、宗匠の芸術観・作風の土台を形作った。

    「我が家には、古今集の独自の詠じ方があり、
    和歌に自らを込める技法が伝わってきました。
    文化とは言葉。
    その時代の言葉を紡ぎ、心を込めるのが歌です。
    時代によって言葉の形は違えども、
    日本人は同じ“言語”の中で連綿と繋がってきた。
    だからこそ、和歌は今でも詠まれ、平安時代に作られた和歌が今でも人の心を打つの」

  • 02 香道

    癒しにも、
    呪いにもなる遊び。

    「香道って人形遊びなんです。
    (源氏物語に出てくる)光源氏ってこういう香り。
    朧月夜ってこういう香り。
    香りを人形さまに見立てて、頭の中で人形遊びをする。
    ただのあてっこじゃない。妄想力なの」

    香りの背景を知り、想像力をふくらませることで、
    その空間がより味わい深いものになる。
    相手に想像の“余白”を残すところに、
    日本人の美意識があらわれている。

    「その中には禁じ手の遊び方もあって、
    時代を呪うようなものもある。
    光があるところには、陰もある。
    ベクトルが一方向じゃないところが、奥深さなの」

  • 03 華道

    自然法則に背いた、
    自然美。

    「マイナスから、プラスを生み出す究極の引き算の芸術。
    お花が一番入りやすくて、一番難しいのよ」

    たった一葉から、生い茂る森を想像させる。
    たった一輪から、咲き誇る花木を思い浮かべる。
    自然を使い、自然界ではありえない
    “超不自然”をつくりだす華道の世界。
    生け方にも二條家独特の美学がある。

    「二條家元流では、
    “球体”の中に花も花器もすべてを収めろと教わった。
    そういう空間のベクトルの違いが、
    流派の違いになるんだと思う。
    うちの家は、文化のベクトルが全方向的なのね」

  • 04 茶道

    お茶の本質は
    “だべる”。

    「茶道って、お茶の立て方も、道具もなんだっていいのよ。
    喫茶の文化って、喫茶店でだべるのと同じ。
    それが茶の湯の本質だと僕は思う」

    大胆な考えをあっさりと言い切る宗匠。

    「相手とお茶を飲む時間をどう使うか。
    どんな楽しい話ができたか、どんな付き合いができたか。
    その中で、お点前だったり、賞玩という考えが出てくるの」

    空間に用意された道具も、草木も、
    すべては相手との時間を豊かに過ごすためのもの。
    形式にとらわれず、伝統文化の本質を見つめる
    宗匠の哲学がにじむ。

  • 05 かな書

    文字を立体視する
    “特異体質”。

    和様書道を完成させた能書家・三蹟のうち藤原佐理、
    藤原行成の2人の一族を持つ宗匠。
    自身も、かな書家として数々の作品を残している。

    「僕は先天的な体質で、文字が立体に見えてしまうの。
    もしかすると一族も同じように
    文字を立体や球体でとらえていたのかもしれない。
    立体の一番完成された形が球体でしょ。
    だからこそ、書を完成させられたのかも」

    10万人といわれる書道家のうち、かな書家はわずか3000人。
    そのなかでも宗匠の作品は異彩を放っている。

  • 06 雅楽

    それは
    「トップモード」の音楽。

    「『雅』って、その時代のトップモード(流行の最先端)のこと。
    それを認めるのは庶民でしょ。
    雅楽も、本来は庶民のものだったの」

    西洋音楽が神に捧げられる音楽であるのに対して、
    雅楽は和歌と同じく生活に身近なものだったと宗匠はいう。

    「はじまりは神事に近いものだったかもしれないけれど、
    西洋のGODと違って日本の神様はもともと人間。
    あくまで“人”が好きな音楽だったのよ」

    現代では高尚なものとされがちな雅楽。
    だが、その本来の姿に立ち返り、
    時代の“トップモード”として、
    もっと人々に寄り添うべきだと宗匠は訴える。

  • 07 遊び

    遊び
    の国のあそび方。

    平安時代から伝わる『貝合わせ』をはじめ、
    日本には多くの遊びの文化がある。

    『「遊びをせんとや生まれけむ」という有名な言葉あるように、
    日本では神様も人も遊んでいる。
    これほど遊びを見つけるのがうまい民族はいません。
    そして、ときには国や女房をかけて真剣に競い合った』

    その精神は、今のオタクカルチャーやゲームカルチャーの中にも、脈々と流れていると宗匠は指摘する。
    「『遊び』の時代が終われば、次は『雅』の時代。
    オタク文化のさらに先を行くトップモードの文化が
    花開くのを楽しみにしています」


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What is 「球」?

二條家元流では
「円相帰想」と呼ばれる考え方があり、
美を「球体」で捉える。
表と裏。
陰と陽。
プラスとマイナス。
光だけでなく、しっとりとした陰の面もあってこそ、
芸術空間に奥行きが生まれる。
その思想は華道や茶道、香道、書道など、
宗匠の活動や作品に反映されている。

循環する 6 つの 文化

宗匠は、文化を
遊(あそび)、雅(みやび)、
猛(たけび)、侘(わび)、
寂(さび)、荒(すさび)
の6つの事象でとらえ、
それが常に循環しているという独自の文化史観を提唱する。
宗匠いわく、現代は『荒び』・『遊び』の過渡期。
混沌の時代を経て、
再びトップモードの『雅』の時代がやってくるという。

What is

藤原鎌足にはじまる藤原氏の嫡流として公家の家格のトップを占めた
「九條家」「近衛家」「一條家」「二條家」「鷹司家」。

鎌倉時代以降、この5つの家系から
代々摂政・関白(※)に就くことが慣例となり、
『五摂家』と呼ばれた。

その影響力は江戸時代末期まで続き、
明治維新になり摂関制度が廃止されてからも、
華族として最高位の「公爵」に叙せられた。

その中の一つ「二條家」は、九条道家の次男二條良実を祖とし、
南北朝期の摂関で歌人としても知られる二條良基などを輩出。
伝統を重んじ、温雅平淡な歌風で「和歌」の家としても名高い。

  • ※「摂政」……天皇が幼い場合などに、代わって政務を行う役職のこと。
  • ※「関白」……成年後の天皇を補佐して政務を行う役職のこと。

WORKS